東京都根岸

飯田町の今川小路に「小沢」という小さな菓子屋があった。当時まきのさんは、下宿していた麹町から本郷にある東大へ向かうとき、いつもこの菓子屋の前を通っていた。酒もタバコもしないまきのさんは、菓子が大好物だったので、自然とこの菓子屋に目がいった。

この菓子屋の店先で働いていたのが、小沢寿衛(おざわ すえ)さんだった。寿衛さんを見染めたまきのさんは、働いていた印刷屋の主人に頼み込んで、仲人になってもらった。

印刷屋の主人の努力のおかげで、縁談は成功し、寿衛さんと結婚。恋女房を得たまきのさんは麹町の下宿を引き揚げ、根岸にある村岡さんの離れを借りて所帯をもった。