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文部大臣に手紙
「ジャガイモは
馬鈴薯ではない」
東京都
文部省が編纂した教科書にジャガイモを馬鈴薯と書いていることに憤り、ジャガイモは馬鈴薯ではない、との解説が書かれたまきのさんの本『牧野植物随筆』と一緒に抗議文を森戸辰男文部省大臣に送った。
「…教科書の馬鈴薯の字面を仮名でジャガイモと御改訂あられん事を日本教育のために希望致します次第であります。」
文部大臣からは、丁寧に返事が書かれた書面が届き、訂正された教科書の抜書きも送られた。
まきのさんによると、本来、馬鈴薯は中国の福建省に産するらしい植物の名で、『松溪県志』という書物に掲載されているが、これがどんな植物であるかは中国人でさえもわかっていない。
本来、ジャガイモは南アメリカのアンデス地方が原産のもので、1565年に初めてヨーロッパに入り、のちに東洋にきた。そして中国人は、この外来植物ジャガイモを「洋芋」「荷蘭薯」と呼んでいて、「馬鈴薯」とは呼んでいない。
江戸時代に小野蘭山という学者が、ジャガイモを馬鈴薯として以来、誰も否定するものがいなかったので広まってしまった。
まきのさんは、『松溪県志』にある「馬鈴薯」の記述を読むと、マメ科のホドイモを指しているのではないか、と推測している。
