東京都

まきのさんを出禁にしたあと、矢田部教授は、大学の権力争いで罷免となった。

その直後、後任の松村任三教授から「大学へ入れてやるから至急上京しろ」と手紙が届いた。まきのさんは「家の整理がつき次第上京する、よろしく頼む」と返信し、31才のとき東京帝国大学助手として復帰した。

月給は十五円。家の財産もなくなり、子供も生まれたので、この頃から経済的に困窮していく。