植物図を描く際、まきのさんはペンではなく、漆工芸用の薪絵筆と墨を愛用していました。筆で植物のやわらかな曲線や硬い直線を表情豊かに描き分け、墨の濃淡で立体感を出しているのですから、そのテクニックたるや、もはや神業!彼岸花の植物図は1ミリの幅に5本もの線を筆で描いているというから驚きです。

薪絵筆は京都の筆師村田九郎衛作のもので、細い線を描く際には面相筆を用い、それよりもっと細い線を描くために、まきのさんは腰の強いネズミの毛3本を抜いて束ね、自分で筆を作っていたそうです。ただし、その毛がヒゲだったのかどうかは定かではなく、どうも噂のようです。